慰謝料請求の証拠収集について(チェックリスト付き)

1.証拠収集の目的

そもそも、慰謝料請求のための証拠を集める目的はどこにあるのでしょうか?
それは、①最終的に裁判で勝つこと、②交渉を有利に進めること の2点です。
詳しくは以下で説明しますが、この点を押えた上で、証拠の収集を行う必要があります。

① 最終的に裁判で勝つこと

  • 裁判所に慰謝料請求訴訟を起こした場合、立証責任は訴訟を起こした人が負います。そのため、訴訟を起こした側は「相手方の言い訳や反論が一般人の目から見て不自然なものと映る程度」まで証拠を収集し、それを裁判所に提出しないと、裁判に負けてしまうのです。
  • ただ、具体的にどのような証拠をどの程度揃えれば十分といえるか判断するためには、法的な知識と経験が必要となりますので、慰謝料請求に詳しい弁護士にご相談いただく方がいいと思います。

② 交渉を有利に進めること

  • 適切な証拠をうまく使えば、相手方との交渉の場面において、相手方に、「このまま裁判になれば、自分に不利な認定が下される可能性が高い」と思わせることも可能です。それによって、交渉を有利に進め、裁判をするまでもなく解決することも可能となります。
  • なお、交渉においては、証拠を相手方に示す必要はありません。むしろ、裁判に至るまでは、自分の手の内を安易に見せない方がいいでしょう。

2.証拠により証明・確認すべき項目

以下の4点が分かるような証拠を収集する必要があります。
 ① 肉体関係の存在
 ② 相手方が、配偶者が既婚者であることを不貞行為時に知っていたこと
 ③ 相手方の特定のための情報
 ④ 回収可能性に関する情報

① 肉体関係の存在

  • 配偶者と相手方が「肉体関係をもったこと」が分かる証拠を収集する必要があります。
  • たとえば、配偶者と相手方が一緒に写った写真や、配偶者と相手方のメールのやりとりなどが証拠として使えることがあります。
  • 「夫と女性がキスをしていた」「デートをしていた」という事実だけでは、裁判で慰謝料が認められない可能性もありますし、認められたとしても、低額にとどまる可能性が高いです。
  • ただし、「キスをしていた」「デートをしていた」という証拠が集積すれば、「合わせ技一本」といった感じで、肉体関係の存在も認定される可能性があります。また、交渉において「このまま裁判になれば、自分に不利な認定が下される可能性がある」と相手方に思わせ、交渉を有利に導くことができる可能性もあります。こういった証拠の評価や交渉・裁判に向けた戦略については、慰謝料請求に詳しい弁護士に相談された方がよいと思います。

② 相手方が、配偶者が既婚者であることを不貞行為時に知っていたこと

  • 相手方が、既婚者と知って配偶者と不貞行為を行ったことが分かる証拠も収集する必要があります。
  • たとえば、配偶者と夫のメールのやりとりなどが証拠として使えることがあります。

③ 相手方の特定のための情報

  • 相手方と連絡をとり、交渉を行うためにも、氏名、住所、電話番号、メールアドレスといった情報の少なくとも一部が必要です。
  • 電話番号かメールアドレスが分かれば、弁護士による「23条照会」という手続きをとることにより、氏名や住所の情報も得ることができる可能性があります。情報収集にお困りの場合は、弁護士にご相談ください。

④ 回収可能性に関する情報

  • 相手方の仕事の内容、勤務先/どの銀行に口座を持っているか といった情報の分かる証拠があれば理想的です。
  • 残念ながら、財産・収入が全くない人から慰謝料をとることはできません(相手方の親や親族に強制的に払わせることもできません)。そのため、慰謝料を請求する前提として、やはり、相手方に収入があるか、預貯金はどの程度あるかといった情報があるに越したことはありません。
  • なお、口座を持っている銀行はなかなかわからないと思います。この点については、興信所による尾行調査の際に相手方が銀行ATMに立ち寄る姿が見られ、それにより確認できたということもありました。また、裁判で勝訴した後であれば、弁護士による「23条照会」という手続きをとることにより、情報を得ることができる可能性があります。情報収集にお困りの場合は、弁護士にご相談ください。

3.どうやって証拠を集めるか?

  • 集めた証拠を全体としてみた場合に、上記の「証拠により証明すべき項目」があると判断できる(「言い訳が一般人の目から見て不自然なものと映る」)といえる程度の証拠を集めるのが理想的です。
  • 具体的には、以下の物が証拠となることが多いですので、チェックしてみてください。
     □ 携帯電話のメール・LINE(夫又は妻と相手方のやりとり)
     □ 携帯電話・パソコンに保存されている写真
     □ フェイスブック・ブログ上の写真
     □ 避妊具、勃起薬
     □ 下着の汚れ(精子、口紅など)
     □ ホテルの会員証
     □ ホテルの予約票、領収証
     □ 携帯電話内蔵のGPSの記録
     □ カーナビの記録
     □ 配偶者の自白を録音したもの
     □ 配偶者が不貞を認めた覚書等の書類
     □ 配偶者の日記
  • これらの物がない場合、あるいは十分に揃わない場合は、興信所を利用することも考えられます。ただし、興信所を利用する場合は相当の費用がかかります。また、興信所によって、成果が違うことも多いです。

まずは、ご自分で収集された証拠で十分か、弁護士に相談されることをお勧めします。当事務所であれば、興信所をご紹介することもできますので、是非ご相談ください。


不倫・浮気の慰謝料請求に関する相談受付中 06-6940-4704 メールでの相談予約